セレスティアエンジェル

第一話


世界は大きく分類して三つに分けられています
一つは、地上界。もう一つが天界…そして、神界

地上界は、ただ一つだけの存在ではなく、時空と言う壁を隔て、無数に存在しています。ある世界では精神論よりも科学が発展を見せ、また別の世界では魔法と呼ばれる力が当然のものとして行使されている。あるいはまだ生命も存在していない世界もあるでしょう。

天界とは人の世のすべてを管理する世界。その機構はいつからうまれたものなのか、それを知る者は一人としていません。しかし、そこに住む天使と呼ばれる者…私達は、人という種を中心に、すべての世界を管理し、統括することを続けています。

そして神界…それは人間界、天界のすべてを創り出したとされる神々の住む世界…しかし、その存在を確かめる術はどの世界にも存在しない。すべてが謎とされた世界…


天界には、様々な種が存在しています。地上界に存在するものも、人々には伝説とされているものも…
その中で、唯一神に通じるとされる力を持つ存在…私達、天使は今この時も、人の世のすべてを見ているのです。

天使達が人間界に関わる多くの場合…空間の壁を隔てて力を使う事は高位の力を持つ者でもむずかしいことです。それゆえに、直接地上界に行き力を行使する、と言う形がとられています。とはいえ、地上界において我々の存在は異形のものであり、その力の影響も大きい…人の目に入らないこと、それが前提であり、制約なのです



「…そして、その天使の中でも我々の役割は地上界に深く関わるものです。ですから、ひとつひとつの行動に細心の注意をはらうようにしてください」
だだっ広い部屋の中、数十人もの数の人が目の前に立つ人物の言葉に耳を傾けている。
何十もの瞳から発せられる視線を受けながらなんの緊張もなさそうに平然と口を動かすその者の姿は…身長は110前後だろう一人の少女。白銀色の髪は光の加減では紫色にも見える。服は全体的に白く袖やすそには青いラインが入っており、袖があまり指先だけが見えているその手には、人差し指を立てた右手のような飾りがついた一本の棒が握られている。
少女の隣には身長2メートルは越えていそうな初老の大男が待機しているように立っている。そっちに目が行っている者も結構な割合を占めているものと思われるが…やはりそれ以前にもただの子供のようなその外見にそぐわず淡々と言葉をつないでいく少女のその姿に、口にしがたい違和感を覚えているものもいるだろう。
しかし、その当事者は知った事では無いのか単に気付いていないのか言葉のペースを崩す事は無く学校の授業じみた解説を続けている。
「…以上で、説明を終わります。 …次の召集および着任式、進水式はただいまより1時間後です、それまでに各自準備を済ませておくように」
少女は最後までその感情を全く感じさせない表情を崩すことなく、隣に立つ男を連れてその部屋から立ち去って行った。

天界に存在する都市『聖都 セレスティア』
そこは天界の中心都市であり、多くの天使たちはその町の中央部に位置する『天使養成学園《時の翼》』でその力の意味、使い方、人の世の仕組み…すべてを学び、世に羽ばたいていく。
天界すべてを見れば、同じ目的を持つ建造物はいくつも存在するのだが《時の翼》はいわゆる名門であり、その生徒や卒業生は一種の憧れを受ける者でもあった。

この少女―ミィルはそんな学園の教師を勤めている。他の教師たちの証言では気がついたら同僚として学園にいたらしい……外見の幼さもさる事ながら年齢不詳で身内がいるのかすらも不明、あらゆる面で謎に包まれた天使だった。
「せんせー、ミィルせんせー」
そんな彼女に声をかける一人の少女…先程の部屋で聞く側に立っていた者の一人だった。
「…リースですか」
ミィルは振り返り、小走りで近付いてくる少女―リースに言葉を返す。するとリースは、少し笑ったような表情で『今日はご苦労さまでした』と一言口にした。
「……リース、公私混同は控えるようにしてください」
「…え? 私…なにかまずいことしましたか?」
急な指摘を受けて困惑するリース。隣に立つ男が何か言い出そうとしたがミィルはそれを制し、一瞬間をあけて咳払いをすると、改めて口を開く。
「いえ、今のように私的な状況なら問題ありませんが…あなたはすでに《時の翼》を卒業した身ですし…それに、私はあそこでは《時の翼》の教師ではなくセレスティアナイツの総司令です。 あのような場で『せんせー』と呼ぶのは控えるようにしてください」
セレスティアナイツ…それは天界に本拠をおく騎士隊である。
その部隊はすべて地上界の人間の間でも伝えられる伝説上の神や天使の名を冠され、オーディン隊を始めとして5つの部隊が存在している。
ミィルは《時の翼》の教師であると同時に、この騎士団の総司令官も勤めている。 …どのようにして両立させているのかはその事実を知る生徒の間でも諸説云々飛び交っているが、真実はいまだ闇の中である。
「…あの、あそこでそんなこと言った憶えは…」
「そうではなくて…そうならないように注意しているのですよ。 ……ヴァルキリー隊、リース・ミスティア」
セレスティアナイツ……その役割は、人間界に紛れこんだ天界の魔物の捕獲や始末、加えて世界のバランスそのものに影響を与えてしまう恐れのある存在もその対象とされている。
人間界の秩序とバランスを保つという天使の役割を考えると、最も重要な機構とも言えるだろう。
「…そうですね、了解しました。ミィル総司令」
「……私的な場なら、呼びやすいように呼んでいただいても構いませんよ。 私も慣れた呼び方の方が落ち付きますし」
「そうですか? じゃあ、せんせー」
「…調子にだけは乗らないでくださいよ」
言われた事とはいえ突然真面目にしたり崩したり…ミィルの表情はあいかわらずだが、内心では不安がよぎっていた
「…まあ、公私混同しているのは私も同じですか」
これといった会話も無く、しばらく通路を三人で歩いていた。 そんな中で、ミィルがふと口を開く
「はぁ、せんせーがですか?」
「…ええ。あなたの事で、ですが」
「…私の?」
リースがそう答えると、ミィルは数秒…その顔をじっと見つめ『ふぅ』と一息つけると再び言葉をつむぎ始める。
「レイヴン副司令、先に戻っておいてください…彼女に話があります」
男―レイヴンは一瞬戸惑いのような表情を見せる。当然といえばそうかもしれない、ミィルとリースはかつての恩師と生徒の仲とはいえ、この場では軍の総司令官と末端の兵士…と、明らかに立場が違う。リースが現れてから今この瞬間までの間も、少々渋い表情で彼女のことをじっと見つめていたのだが、程なくして了解し無言のまま立ち去って行った。
「…次の召集まで1時間…といいましたが、本当ならあの後すぐに艦内にいくはずでしたがね」
「はぁ… それで、なにか」
「……リース、あなたは今日まで私の家で暮らしていましたね」
「…はい」
「あの時の約束では、私があなたの面倒を見るのは卒業するまで。それ以降のことについては一切触れてはいません」
この一言を耳にしたその一瞬、リースの表情が曇った…が、ミィルはそれを目にしながらも言葉をとめる事はしなかった。
「…さて、ここであなたには三つの選択肢があります。一つは私の家を出て実家に帰る事、もう一つはこのまま私の家で暮らすこと……そしてもう一つは、あの艦ですね」
「…艦…ニーベルゲンの事ですか?」
「はい。 これからあなた達が乗りこむヴァルキリー第七小隊の艦です。中には居住区もありますからね」
各隊には、一隻づつ戦艦が配置されている。時空艦とも呼ばれているこれらの戦艦は、人間界に移動するための空間を渡るシステムが搭載されていて、さらにはその世界で不自然な存在にはならぬようにその外見まで変える力もある。もっとも、基本形は人間界で言う大航海時代の帆船風とされている し、変化するといっても幻影で艦体を包み込む形なので極端な近距離ではその意味も無いのだが。
…もっとも、戦艦自体が人間界に移動する事などは非常に稀な事である。
それは基本的には天使達個々の力でもほんの数名集まれば十分対応できる事態のほうがはるかに多い状況のためである…それでも艦が存在するのは…大昔に行われた天界戦争『ラグナロク』の名残であろう。
「もっとも、家に戻れるのは非番の日くらいですからね。そういう意味では艦の部屋を使っていたほうが色々と便利でしょうけど」
「……」
「ですが、私としてはあなたは家に戻ったほうがいいと思います。 …今のあなたなら、現実に目をそむけずに向き合えると思っているのですが…」
「………私は…」
「ミィル総司令」
リースがその問いに答えようとして口を開こうとした丁度その時、背後から一人の青年が声をかけてきた。なぜかその呼びかけにビクっと身を震わせ思わず開きかけた口をつぐんでしまう。
「ジークフリード艦長に…ディートリヒ副長。何か?」
騎士隊の軍服に身を包んだ2人…艦長、と呼ばれた男はおおよそ二十台前半、副長は二十後半といった外見だろう。しかしそれは人の感覚で言えば、の話だ。
人間から見ればなぜこんな若造が艦長なのだ、という反応が見られるだろうがそれは天使と人の成長速度には明らかな差があるための事である。天使達の成長は二十歳前後まではおおよそ人間と同じだが、その後の老化は平均寿命が約250年とかなり遅い。
実際の年齢は30、40は越えているだろう。
リースは我に返ると思い出したかのように姿勢をただし、隊の証明である腕輪をはめた右手を胸にあてるという敬礼の体制をとった。直属の司令官とその副官、敬意を示すのは当然の事であるが…
「いえ、このたびは総司令自らがわざわざおこしいただいて…」
副長が話しはじめるのを耳にしたリース。言葉をさえぎられた事が原因か、その一瞬どこか物寂しそうな顔を見せていた。
ミィルはそんな彼女に一瞬目を向けて、ただ淡々とした声で呼びかけた。
「すこしお待ちを……リース、準備もあるでしょう。そろそろ行きなさい」
「…はい」
「…答えは、この航海が終わった後で…よく、考えてください」
「………はい」
そして、最後にただそれだけの言葉を交わして…リースは通路を走り去っていった。
「総司令、彼女と何か話していたのですか?」
「ええまあ、少し相談事を。それで、何か」


―ヴァルキリー第7小隊、着任式―
縦に二列に、一定の間を開けて向かいあうようにして並ぶ天使達…その中に、慌てて駆けこむリース。
召集までギリギリの時間、まだ間に合ってはいた事に安堵し、列の中の決められた場所に入りこむ。
「リース、遅い! 何してたのよ」
「…何かあったの?」
その時、小さな二人分の声が耳に入ってきた。
「スフィア、カノン」
青い髪をポニーテイルでまとめた少女―スフィア・セルリード、肩までのエメラルド色の髪の小柄な少女―カノン・リフシル。スフィアは少し怒ったような、カノンは心配そうな表情でリースに顔を向けている。
この2人はリースとは在学中からの同級生であり友人で隊の今回の就任までも一緒だった。と言ってもスフィアはリースと同年齢である14だが、カノンに関しては10歳と、まだ世間的には少女と言うよりは子供と呼ばれる年齢である。
元々《時の翼》は飛び級制度もあり卒業さえすれば就職資格はもらえるのだが…ふつうに進級して行けば卒業は18歳、リースには他に四人の友人がいるのだがその四人も同じく複数年飛び級生で年齢がバラバラの事もあり校内ではかなりの名物集団だった。
今回の就任でも誰かが仕組んだかのようにこの七人は同じ隊に選ばれている。腐れ縁もたいがいだなと影で口にしている者がいるかもしれないが、当人達にとっては『いつも通り』な日々がすごせるためにそんな事は気にするようなことでもなかった。
「さっきの休憩、ずっと探してたのにいないんだもん。 先に来ちゃったわよ」
スフィアがぶつくさと言いながらそのポニーテイルを揺らして、いかにも作ったかのような不機嫌顔でリースを睨む。
「ごめん。ちょっとせんせーに会ってて…」
「…ああ、そうか。当分先生にも会えないしね…」
「…うん」
華やかな街の中や、街にあるような外見にまで気を使われた建物とは違う無機質な部屋、例外と言えば壇上の周辺の飾り付けくらいだろうか…それとも、そう感じるのは自分の心の中のせいだろうか。
…一つの決断を迫ってきたミィルの言葉。それが未だ耳に残り、その心情も表情にまで表れていた。
新たに建造された時空艦『ニーベルゲン』、その処女航海こそが新たに隊に就任した彼女等の初任務である。時空間移動システムのテストも兼ねているため地上界に行く事になっているが、当然航海中にここ天界に戻ってくる事はない…《時の翼》にいる彼女達の恩師、ミィルにも会いに行く事は出来ない。
「ミィルせんせーねぇ、私はなんか苦手なんだけど。ちょっとは笑ってほしいもんだわ」
少し哀愁感じさせる二人をバックに、スフィアが誰もいない虚空に向けて苦笑いともとれる表情で、あからさまにわざとらしいため息をつきつつ小さく愚痴る。リース、カノンの二人は彼女の言っている事には納得できているのか、意識せずして口元が少し笑っていた。
「…にしても、さっきの休憩、一時間って短すぎると思わない? 準備って何か買いに行ってる時間も無いし…」
「確かにこの基地、街の中とはいえ端の方だし、商店街まで往復だけで時間とられるしね」
城壁に囲まれたやたらと広い面積を誇る街、セレスティア。なにも商店街にしか店が無いわけではないが品揃えと言う点ではその辺りが真っ先に思いつく領域らしい。
「でも、準備って言っても何か買いに行くだけじゃないし…ほら、しばらく艦の中で暮らすわけだし、自分の荷物の確認とか」
リースだけはこの中途半端な空き時間の意味を知っている。そしてそれは自分のためだけに作られた空白である事も。そしてそのせいか、少しあわてたようにして弁解を入れた。
「それもそうだね、でも荷物のチェックはさっき終わったし」
「昨日全部やっといたから大丈夫だよ」
神経質と言うわけではないが細かいところまでよく気をむけるカノン、少々大雑把で一度したから大丈夫とか言っていたり細かいところは気にしないスフィア。こういうところでも性格出るなぁ、とリースの脳裏に浮かんだがそれを声には出さなかった。
「ま、そんなことより楽しみよね。人間界」
「スフィア、行った事なかったっけ?」
「ないわけじゃないけど、個人で行こうとしたら許可取ったりとか規則とか色々面倒だったし、学校通ってると何日も向こうでゆっくりしてらんないから、そんな何度も行ってないよ…っていうか、私はあんた達と一緒に行ったくらいよ?」
「ああ、そうだっけ」
「…ところで、規則は仕事で行ってもある程度適用されるけど?」
「手続きとか面倒なのがないだけマシよ。それに今回は結構長期間滞在するって話だし」
「それ以前に仕事で行くんだから遊んでる暇もないと思うけど…」
「いくらなんでも毎日休み無しでもないでしょ?」
「そうだろうけど、仕事だってこと忘れないでよ? スフィアが一番心配なんだから…」
「何よ、リースのくせに」
「…少なくともスフィアよりは真面目な自信はあるけど」
「うん、私もそう思う」
「……なんでそこまで言われなきゃならないわけ?」
がく、という効果音付きで肩と顔を落とすスフィア。誰しもどこかで自覚している事を改めて言われると落ち込むと言うが、スフィアもその例に漏れず、二人の言葉に対してそれなりに打撃を受けたようだ。
「気にしない気にしない。 …ところでカノン、皆はなにか言ってた?」
「ううん、特には」
「そっか。 まあ、どうせしばらくは艦の中で一緒なわけだしね」
「それもそうだね。 …っと、そろそろ時間かな。」
ごそごそとポケットの中を探り、真新しい懐中時計を取り出すカノン。その三つの針は、確かに時間が迫ってきている事を示していた。
「だね」
「かったるいなぁ…もう少し遅く来てもよかったかも」
その口から出てきた言葉の通り、スフィアはだるそうに少し手の位置を変え、腕時計に目を向ける。
「遅れるよりいいと思うけど」
「…今のあんたには言われたくないわ」
「…でも、学校だとよく遅刻してたし…」
どこかわざとらしい口調でそんな事を口にするリースに、またもや彼女は反論できずに『むぅ…』とうなるだけしかできなかった。
「…リース、スフィア、はじまるよ」
式の開始を意味する音楽がこの部屋の中に流れ始め、カノンはその一言で二人を取り成すと、ぴしりと姿勢を正した。
そして、リースがもう一度スフィアの方に目を向けると…今までにないような真剣な表情で、普段見なれている姿からは少々不自然さも感じる程だった。
それに少し笑いが出てきそうになったがこらえて、すっと深く息を吸い込んで、式が進むのを待った。

後ろの扉が開き、総司令のミィル、その副官であるレイヴン…と、司令部の者達が全員で七名、順に部屋へと入り、その七名に対する敬礼の姿勢を崩さず並ぶ天使達の間を彼女達は通りぬけていく。
そして、その最後の一人が列の先頭であるジークフリード・セルゼイ隊長、ディートリヒ・フォーチュナー副長の横を抜けた時、全員が一斉に壇上に身体を向けた。
壇上の中央に立つミィルの手には、いつもの飾り棒はなく、荘厳な装飾で彩られた一本の槍が握られている。

一人一人、壇上からの点呼に従い一歩づつ横に出ていく。
壇上に立つミィル、その瞳は点呼を受ける全員に向けられているようで、その実自分の表情だけを常にとらえている…緊張の中で、リースの目の中の彼女の姿はそう映し出されていた。
「リース・ミスティア」
「…っ! は、はい!」
名を呼ばれ、ふと我に返る。少し上ずった声でなんとか返事を返し、前の者達にならって一歩横へ出る。
点呼の声を聞き逃す事は避けられた事に胸をなでおろして、今は目の前の事に集中しようと一度深呼吸を行った。



過去の戦争の名残か、未だに残る戦艦という兵器。
そしてこの日、この瞬間。新たに建造されたアヴェマリア級時空戦艦―ニーベルゲンが地上界へと降りていく…初の航海が始まろうとしていた。
人為的に開かれた時空間の亀裂、そしてその中に消えていく一隻の艦…そして、それを見送る天使達。
その中には、先程まで乗員と共に艦内にいたミィルの姿もあった。
「行きましたね」
「はい、何事も無ければよいのですが」
隣に立つのは彼女の副官である大男―レイヴン。彼はそう答えながら少し不安を感じさせる表情で、光の中に消えていく艦をただじっと見つめていた。
「確かに、事故は無いにこしたことはありません」
「………心配ですか? 司令」
「心配は全く無い、と言えばそれは嘘になります」
ついに船体は全て異空間へと消えその直後、空間の亀裂は瞬時に修復されていく。
ミィルはそれが完全に閉じきると、すっと振り返り歩を進め始める。同時に、レイヴンもそれに付き従い、その後ろを歩き始めた。
「まあ、あの子達が行く先ではなにかしら一騒動ありますし、そのたびに心配していてはこちらが持ちませんよ」
「……それでいいのですか、本当に」
「大丈夫ですよ。あの子達なら、何があってもなりゆきで何とかしてしまうでしょうから」
「…それはとても大丈夫とは思えないのですが」
「いいんですよ。全ての結果はあの子達次第、行ってしまった以上こちらから何かするのも野暮と言うものでしょう。 それに部下を信頼できなくて何が総司令ですか」
「……」
「私達は、必要な時だけ手を貸してあげればいいんです」
その時、ミィルは確かにふふ、と笑みを浮かべていた。
彼女の表情が一目で認識できるほど変わっていたのは非常に珍しい事だが…何を思っての笑顔だったのか、それは一瞬で元に戻ったために誰にも識別する事は出来なかった。
しかし、それは確かにどこか楽しそうなものだった…と、後にレイヴンは思いかえしていた。


「じっくり、考えなさい…リース」


 


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