―12月18日― (三編)
 

 






ふきっさらしの川沿いの道をてくてくと歩く俺達。
こーやってのんびり町を歩いてると、あの時の事が思い出されるなぁ。
「拓也、憶えてる?」
「ん? 何をだ」
「ここで肩車してもらった時の事です」
「おお、そういえばそうだったな!」
確かあの時はゆのはが足が痛いって言ったからおぶってやったんだよな。
それで背を向けてしゃがんでやったらいきなり蹴ってくるんだもんなぁ。あれは予想して無かっただけに痛かった。
「あの時、けっこううれしかったんですよ」
うーん、そうだったのか。ただのわがままで終わってると思ったんだが、けっこううれしい事を言ってくれる。
ちっちゃくて、あったかくて、かるいゆのはは、神様だと思っていても、あの時は本当の妹のようだった。
「わー、拓也さんとゆのはちゃんって肩車した事あるんですかー。いーですよねー肩車って。 わたしも時たま友達にしてもらうんですがー、キモチイイですよねー」
肩車して貰う友達? ……ああ、あいつか。
この調子だとあいつも相変わらずなんだろうな。
「ところで、ここでしてもらったって、来た事あるんですかー?」
「えっ…」
「馬鹿…」
ひめの呟きが聞こえた。
「いやいやいや、えーと、前にここと似たところに行ったことがあってだな」
「うんうんうん、その時に拓也に肩車してもらったんだよー、あははははは」
「そ、そうだゆのは、久しぶりに肩車してやろうか」
「わ、わーいありがとう拓也」
うわっ、二人ともめっちゃ早口だ!
俺は慌ててゆのはに背を向けてしゃがみ、ゆのはも急いで俺の背中にしがみついてきた。
懐かしい感触…とか感傷にふけってる余裕もありゃしない。
「はぁ…もう、いちゃいちゃするのはいいですが、わかばさんの前なのに…」
「大丈夫ですよー、わたしの事は気にしないでくださいー」
むしろ気にしたいです。
「わかばさんがそう言うなら、私も気にしませんけど…」
「あ、そうだ。 ひめちゃんはわたしが肩車してあげるよー」
「え? …いいんですか?」
「うん、全然かまわないよー」
そう言うと、わかばちゃんは一度しゃがんで姫を肩に乗せて、立ち上がった。
「これでおねえちゃんとおそろいだねー」
わかばちゃんのコメントも微妙にずれている気がするが、なんかこのまま肩車の話題を引きずられると恥ずかしくて死にそうだ。
話題のそらし方がまずかったか……えーっと、何か無いか、ほかに何か。
「そ、そういえばこの町って昔温泉あったそうですねー」
我ながら強引だ
「あ、はいー。 本当にすごーくいっぱい沸いていたそうでー、この川も湯気をあげていたそーですよー。良く知ってますねー」
「ええまぁ、この町の郷土史もちょっと調べてきたんで…」
実際調べてみたのは確かだ、ゆのは自身から聞いた部分も多いけど。
ゆのは姫の伝説はこの町をでるとすげーマイナーなものだから、資料を見つけるのに苦労したなぁ。
「心のぉなぁかにぃ♪ いつまでもぉ かがやくぅ♪ 俺のぉ俺のぉ北斗ぉ七星ぃぃぃ♪ とくらぁ」
なんか急に異様に安っぽいエンジン音が聞こえてきた。
しかも、一度聞いたら忘れられないこの特徴的な声と歌詞!!
「おじいちゃーん」
おお、ハーレーそっくりなバイク!! あくまでそっくり、パチモン。
微妙にそこはかとなくダメな感じ。この町でこんなバイクに乗ってるのは、俺の記憶によればただ一人!!
まちがいない、このじーさんは!!
「おうっ。わかば、おはよーさん」
「しぶわぁ!!?」
俺は思わず叫びそうになっていたゆのはを、思いっきり体を揺らして止めた。
俺も思いっきり叫びそうになってたがなんとかこらえた。
「なにするんですかっ!」
「俺達は『初対面』だろうがっ」
俺とゆのはは小声でやりとりする。横を見るとひめがまた軽く頭を抱えていた。
「おはよー。碁うちに行ったんじゃなかったんですかー?」
「行ったには行ったんだかよぉ。ピンポンのやつがよ。 またからんで来てよぉ。 うざってぇから帰ぇって来た」
「あー。もうすぐだねー」
「ったく、たまらねぇぜ……んん?」
サングラスの下から放たれた鋭い視線が、俺とゆのはとひめを見た。
「こいつらが、みつ枝さんが言ってた。 客人ってぇワケかい?」
「そーだよー」
怪しい爺は、妙に鋭い目つきで俺達を睨み付けた。
「ふぅむ」
俺は野生の血が騒いで反射的に睨み返した。
「むっ。むむむ」
眼光が鋭さを増す!! 普通の坊やなら圧倒されるトコロだ。
だが、俺は負けぬ!!
「むっ。むむむ」
俺がこなしてきた様々なアルバイト先には、鋭い眼光を備えたオヤジや爺どもが、いくらでもいたから慣れているのだ!!
「くわっ」
「くわっ」
俺達は目を剥き合い、火花散るアイコンタクト!!
「……野蛮」
「二人ともあの時からぜんっぜん成長してませんね」
「くわっくわくわっ」
「くわっくわくわっ」
空気も沸騰しそうな激しい睨み合い!!
一色触発のまさにキューバ危機!!
「おじいちゃんすごーい。 目つきの悪いホッキョクグマみたいだよー」
俺達は思わずわかばちゃんにアイコンタクト。
「ホ、ホッキョクグマァ?」
「なぜにっ?」
「…わかばさんももうちょっと発想に変化があってもいいものですが…」
「所詮はわかばおねえちゃんです」
何気にひどい事言うな、だぶるゆのは。
「たった今、ペンギンさんを30匹ばかり噛み殺してきたって感じの凶悪さだよー」
だからどういう例えですか。
「北極熊とはなんでぇ!!」
「うーん。じゃあヒグマくらいにしとくよー」
「ひ、ひぐま」
「北極熊とヒグマの違いってなんでしょう?」
「住んでるところじゃないの?」
そういえばわかばちゃんのなかで北極熊とヒグマにどんな違いがあるんだろう。今更ながら気になる。
「えーとねー。拓也さんは、暴走している耕耘機って感じかなー」
「無生物ですかっ!?」
「じゃあ、暴れ牛……は駄目だから、暴れカラガラドンくらいにしておくよー」
「なぜ、架空生物!?」
「あー、そういえばあの山猿のあだ名って確か…」
「ええ、暴れ牛でしたね」
さっきから頭上でゆのはとひめが俺達の会話をダシに話しこんでいる。
べつにいいんだけど、特にゆのははほとんど真上だからなんか気になる。
「いきなりにらめっこ始めるから、もうびっくりしちゃったよー」
「いや、あれはだな……」
「まぁ……その……」
初対面だと言うのに、礼儀も恥もかき捨てていきなり獣と化してにらみ合った俺達は、なんとなく決まりの悪いマナザシを交わす。
そんな男達の顔をわかばちゃんは交互に見て。
「いきなり仲良しさん?」
目の前の爺は破顔一笑。
「ははははっ!! わかばにゃかなわねぇなっ!!」
「ええっ!? わたしおじいちゃんとなんにもしてないよー」
「わかんねぇのがわかばのいいトコロさ。 でだ、この兄ちゃんに、ワシを紹介してくれねぇか?」
「うん!! あのねー。この人は商店街の会長さん。高尾渋蔵会長だよー」
うむ、相変わらず元気そうな爺さんだ。
きっとこの先も長生きするだろう。
「しぶぞう!」
「しぶぞうさんですか」
二人もようやく名前で呼べるようになってうれしそうだ。
数少ない60年前からの顔見知りだもんなぁ、たとえ向こうは忘れているとしても。
「しぶぞうとは珍しい名前ですね。渋谷の渋に大石内臓助の蔵ですか?」
「わかば!! 何度も言うが、ワシはシブゾウじゃない!! ジュウゾウだ!!」
「あーそうだったねー。椿ちゃんがいつもそー言ってるから、えへへー」
「綴は兄ちゃんの言うとおりだがな」
「高尾渋蔵さんですか」
椿さんも相変わらずこの爺さんの扱いに苦労してそうだなぁ。
まぁ、それでも最終的に手玉にとられてる渋蔵さんが、未だに脳裏に浮かぶ。
「しぶぞうっ!! しぶぞうだっ!!」
「しぶぞうさん、こんにちわです」
「お嬢ちゃん、ワシはシブゾウじゃなくて」
「し・ぶ・ぞ・うっ!!」
「しぶぞうさん?」
「しゃあなねぇな……シブゾウでいいよ、シブゾウで」
またシブゾウで押し切っちまったよこいつら。
まぁゆのは達は昔からそう呼んでるわけだからそっちの方が呼びやすいんだろうけど。
どうせなら俺も呼んでみたいものだなぁ。
「しぶぞうさん!!」
「ワシはジュウゾウだっ!! 兄ちゃんには許可してねぇよ」
やはりだめらしい。まぁいまさらな事だし、とりあえず話題は変えておこう。
「もしかして椿さんのお祖父さん?」
「すごいよっ拓也さん!! なんでわかったのー?」
「苗字同じだし」
元から知ってましたから、とは言えず…ああ、はがゆい。
「なるほどー。顎十郎みたいな名推理ですー」
「顎十郎?」
「ほほう。早速、ワシの孫に目をつけたか。油断もスキもねぇ奴め」
「いえ、別にそう言う訳では」
「だがな。兄ちゃん。 ワシに勝たねぇ限り、孫はやらねぇよ」
「だからそういう訳では」
というか、俺にはゆのはという恋人がいますし。
「わぁっ。ドラマみたいだー」
わかばちゃんも焚きつけないでください。
「拓也は私と恋人同士なんです! 拓也は椿おねえちゃんになんか見向きもしません!!」
「多少のアクシデントはありましたけどね」
ひめ、俺が殺されるからその事はたとえ小声でもこの人の前では絶対言うな。
「何!? 兄ちゃんが、この嬢ちゃんと!?」
「ええ、そうですが…」
俺とゆのはを交互に見る渋蔵さん。なにか変な事でも?
「兄ちゃん、いい大人が中学生に手を出すのは犯罪だぞ」
「…私、15歳です」
まぁ、名目上は。実際の年齢は俺も知らんしゆのはも憶えてないらしいし。
しかしたとえ15歳でもギリギリ高校1年生だ。てことは3年前は……俺ってかなり危ない橋渡ってたんだなぁ…
「まぁいい。このさい椿は抜きにしてもだ、兄ちゃんとは、いっぺん決着をつけんといかん気がするな」
さっきのにらめっこ(わかばちゃん・談)の事を言っているのだろうか?
だとすればやっぱりすげぇ爺さんだ、いろんな意味で。
俺がそんなことを思っているのをよそに、爺はひらり、とハーレーもどきのバイクにまたがると。
「拓也っつったな!! 挑戦されるのを楽しみにして居るぞ小僧!! その時には、敗北の味を教えてやるぜ!!  はーっはっはっはっはっはっは!!」
異様なエンジン音を響かせて走り去って行った。
やっぱ元気だ、渋蔵さん。
「拓也さん!!」
「な、なに!?」
「いつ挑戦するんですかー?」
「そんなに目をキラキラされても……」
「拓也は挑戦する必要なんかありません!」
「まぁ、そうですよね。 そういった意味では椿さんに興味は無いようですし」
それって俺には地味に嫌味っぽくきこえるよ、ひめ。
「日取りが決まったら教えてくださいねー」
わかばちゃんも話聞いて無いしなぁ。
……む、なんか走り去ったはずのバイクの音がまた近づいて来るぞ!?
「そういや、お嬢ちゃん達の名前は聞いてなかったな」
「おおっ!!」
そういえばどさくさで俺の名前は判明してしまったが、二人のことはまだだったな!!
「草津ゆのは。よろしくねっ。しぶぞう!!」
「草津ひめです。ゆのはおねえちゃんの妹で、おにいちゃんとは親戚同士です」
「大体のナシはみつ枝さんから聞いてるぜ。 仕事が欲しいんだってな。 ま、ワシに任せておけ」
「よろしくお願いします!!」
これでまた死から一歩遠ざかったぜ!!
「おうよ!! では、またな!!」
そういうと、またエンジンをふかす爺。
「ああ♪ 北斗七星。希望の星。 夜空を見上げりゃ星が滲んでやがるぜ。 ああ、みえねぇみえねぇぜ七つ星♪」
しかも、どこかで聞き憶えのある演歌を歌いながらだ。
またも、ハーレーもどきは異様なエンジン音を響かせて走り去って行った。
「これで安心だねー。 明日から仕事がばんばん来るよー」
「よかったね、拓也」
そう言って肩の上の我が恋人は、満面の笑顔で俺の顔をのぞきこんでくると。
「早く25万稼ぐために、馬のように牛のように身を粉にして働いてね♪」
そう言う笑顔はまぶしいが、言ってる事が…
「…事実そうなのはわかるが、なんかむかつくぞその言い方」
「死ぬよりはマシだと思いますが」
うーむ、簡潔な言い方だ。そういや最初はひめも神様っぽい言い回ししてたが、今はただの敬語だな?
でも前のゆのはのようにわざわざ神様っぽい言い方はしない分、良くも悪くも直接心に突き刺さってくるぜ。
「うーむ、まぁそうだな。生きてるのが当然で忘れてたが、生きてるだけで丸儲けってヤツだよな」
「単純なやつ……」
「あのー、何のお話でしょうか?」
おもいっきりわかばちゃんに聞かれていた。そりゃそうだ、わかばちゃんの頭上からも声がでてるんだもん。

…とりあえずこの場はゆのはとひめの連携プレーでごまかされたが、失礼な言い方だがわかばちゃん相手だから上手くいったような気がする。
これからは注意せんとな…




「ここが、ゆのはな町公民館ですー」
「うぅむ、立派な建物だなぁ…」
不景気な雰囲気がかぐわしく立ちこめる町にしては、やはり妙に立派な公民館だ。
天守閣モドキの役場もあるし、あいかわらずバブル時代の遺跡は健在か。
「ここが一番人口密度が高い場所なんだね?」
知ってはいるが、とりあえず確認はしておく。
「はいー。そしていちばん健康に悪い場所でーす」
「…………」
うーむ、やはりこの中身も相変わらずだということなのか。
「あー、疑ってますねー。でも、行けばわかりますよー」
「あの、わかばさん。 ここからあるきます」
「そう? わたしはかまわないんだけど」
「いえ、降ろしてください」
ひめのその言葉を最後に、わかばちゃんは残念そうにしながらもひめを降ろした。
地面に降りたひめは、一度こっちを見ると黙って中へ入っていった。わかばちゃんもそれに続く。
「拓也、何ぼんやりしてるの? 早く後へ続きなさい♪」
「……妹が歩いてるのに姉が歩かんのか?」
「…………んーと…」
俺はゆのはの脇腹をわっしとつかんだ。
「ま、待って待って!! 降りるから、降りるから無茶な降ろし方やめー!!」
神様じゃなくなったぶん無理ないいわけも出来なくなったらしい。
まぁどっちにしろ降ろすつもりだったが。
「…はい、降りました。 …久しぶりなのに、もうちょっとひたらせてくれても…」
後半小声で何か言ってたが、流石にこの中の人全員にこの姿を見せるのは恥ずかしい。
人が居なけりゃいいと言うわけでもないんだが。



「ねー。一番人口密度が高い場所だったでしょー」
そう、相変わらずその言葉にウソは無かった。
町営の碁会所の100平方メートルにも満たぬ空間は、俺達が行った時点で既に100名以上の老人がいた。
ただでさえ人口密度が高いのに、次々と他からも人が押し寄せて来たのだから、それはもう凄まじい人混み。
「ラッシュアワーの電車並だったよ。ゴホッ」
「…はひはに」
「らっひゅはわーれふか?」
ゆのはとひめが、善人達から巻き上げたキャンディーを口の中でしゃぶりながら呟いた。
心なしかゆのははなんかげんなりして見える。
…そういやゆのはは経験者だったな、前に俺の大学にまで無理についてきた時に。
「それテレビでみたことあります!! なるほどー、あんな感じなんですかー。 これでいつホンモノを体験しても大丈夫ですねー」
「…わかばおねえちゃん、アレはやめたほうが…」
ゆのはがかなりマジな顔で言ってる。そうだよなぁ、キツイよなぁ、アレは。
「ゴホッ、そうだ、ホンモノは体験せんでもいい… ゴホッ、ゴホ……!」
「それに、健康にも悪かったでしょー?」
咳き込む俺を、わかばちゃんが気遣ってくれる。
彼女の言葉はまったくもって正しい。碁会場の中は、目が痛くなるほどに煙草の煙が充満していたのだから。
「ありゃ発ガン率が高そうだ……コホ」
なんかまだ、喉の奥のあたりがいがらっぽい。
…ああ、ひめが自分から肩車断ったのはそのためか。地面に近い方がとりあえず煙は少ないもんなぁ。
「大丈夫だよー。公民館には診療所もあるからー。すぐ見つかるよー」
「って発ガン前提ですか!?」
「手術だって出来るんですよー。最新のレーザー設備があるのが自慢でーす」
「……」
あえて口には出さないでおくが、この町の景気はいいのか悪いのかさっぱりわからん。
バブルの時代にレーザー設備があるとは思えんし…



「先生は、もう95くらいになる方で、少々ボケ気味なんですけどー」
「…まだ生きてたのかあのアル中」
「残念ながら未だ現役のようです」
ゆのは、ひめ、気持ちは分かるがとりあえず『知ってる発言』は口に出すな。
それに小声とはいえその言い方はいろいろとまずい。
「でも、だいじょうぶです!!」
…だから何が大丈夫なんだ?
「手術前にお酒をコップ一杯めしあがると、手の震えもボケも治って、それはそれは素晴らしい腕なんですよー」
「………」
「………」
「………」
多分俺達3人全く同じ顔してる。
「ブラッフジャック顔負けなんですよー。普通の料金しかとらないぶん、ブラッフジャックよりすごいですよねー」
「色々な意味でスゴイね」
この町では、死んでも手術などするまいと、俺は心の中の星にあらためて強く固く誓った。
「ん? ゆのはちゃん、ひめちゃん、どうしたのー?」
「あ、えっと、久しぶりにいっぱいおかし食べられて…」
「しあわせで、ぼぉっとしてましたぁ」
「よかったねー」
俺達が披露したあながち芸と言えなくもなくなってきた身の上話は大好評。
公民館中の老人どもが碁会場に押し掛けて、再演につぐ再演で涙涙の愁嘆場。
不幸で不憫でカルビス名作劇場な草津一家は、たちまちにして有名人。
ゆのはとひめはすっかり人気者。
ゆのはは愛くるしい笑顔…というより今は中学生程度なので、まぶしい笑顔と言うべきか。
とにかく、ゆのははまぶしい笑顔とさびしげな顔を使い分け…
そしてひめは、哀愁漂う辛さを無理矢理押し隠したような悲しい笑顔で老人どもから御菓子をもらいまくっていた。
いじきたなく食べる姿さえも、よほどお腹がすいていたんだろうと、涙と同情を誘いまくる始末。
一方、俺はまたもやダメ婚約者のダメ兄貴で定着。
老人どもから激励をもらいまくった。
「きっと、この土地の神様が素敵だから、住んでる人もやさしいんだね」
自分で言うかこいつは…いや、今の神はひめだから自分じゃないのか?
でも元は同一人物なわけで…うーむ、複雑な発言だ。
「……」
ひめはひめで、微妙な表情でゆのはを見ていた。一応ほめられてるんだから(?)、ちょっとは笑ってもいいものだが…
…そういやひめってあんまり笑わないよな。 おっと、演技の笑顔は別にして、だ



「わ、パフェだ!! おいしそう!!」
めぐりめぐって―と言うほど歩いて無い気もするが―またも商店街。
ゆのはの指が指し示したトコロには。
「うん。おいしいよー。 榛名さんの作るイチゴパフェはサイコーだよー」
喫茶店の入り口に、やけに豪勢なイチゴパフェの模型。
…あ、なんか嫌な予感。
「…おねえちゃん、ヨダレ」
「こ、これは汗です!!」
「口の幅一杯に垂れている汗があるか!!」
まぁアイス一本買う余裕の無い俺達にパフェを食う余裕などあるはずもなく…結局パフェもお預け状態が長い事続いている。
当然、アイスよりもお預け期間は圧倒的に長い…って、さらに猛烈に嫌な予感
「拓也ー、あれ食べたいー」
「まだ喰うかー!!」
甘い物は別腹と言うが、食えるもの全部別々に入ってるんじゃないのかこいつ。
「…私も食べたいです」
「……ひめ、無駄遣いしてる場合じゃないんだろ?」
「大丈夫ですよ、私とゆのはならちょちょい、で騙くらかせますし」
「だから騙す言うな」
「それに、いざとなったらゆのはの財布にも2000円ありますしね」
…ゆのはがそう簡単に使うかな? それに、ひめでもゆのはをハメるのは簡単じゃないだろう。
と思った時には、二人の姿は隣から消えていた。
「す、素早っ」
「育ち盛りですねー」
「おい、まてぇぇっ!!」




「待てって! ………………うわっ!?」
ゆのはとひめを追って喫茶店に飛び込んだ俺に、突然の衝撃!

むにゅん

こ、これは一体!?
このやーらかいここちよい感触は!?
「あら?」
もう一度PUSHして確認だ!!
「あらぁ?」
「あぁっ!?」
ゆのはが思いっきり声を上げている。
いや、それよりもしやっ。 もしやこの感触は!?
さ、さらにもう一度念入りに確認する必要性をものすごく感じる……!!
「あらあら……!」
「ま、ま……間違いない!! これは、とってもすんばらしい男の故郷の感触だっ!!」
「た、たた、拓也ー!」
「…馬鹿です、阿呆です」
…………なんか、すごくヤバい感じがする。
いやまて拓也、お前にはゆのはという恋人がいるんだろう!?
し、しかし、早くどかなければと思えば思うほど体が勝手に……!!
「あらン、やだ……もうっ、そんな、素晴らしいだなんて、おはずかしぃですわっ」
「い、いやっ、もうなんつーか、至福というか、ステキというか、天国まで3マイルというか、もうもう」
「もう、からかっちゃいやですわ」
「い、いや、からかうなんてそんな、これは事故です! 事故っていうかその!! あぁぁ……す、素敵すぎる事故がその、俺の胸をトキメキトキスで事故がその……!」
この、若者の胸をときめかせるたぐいまれなかおりがもうなんともっ!!
「あらあらまぁまぁ、どうしましょう。 そんなに誉められても困りますわぁ」
「いえ、事実ですから!!」
「榛名さんの胸って、ぽわぽわできもちいーんだよねー」
「……………………………………」
「……お、おねぇちゃん…………?」
「もうっ。わかばちゃんまでそんなことをぉ。 でも……あのぉ……できましたら、もうそろそろ……」
「はっ!?」
なんかどっかであったように、天使と弁護士と悪魔の俺が耳元に現れて囁きかけてきた。
「いけないよ拓也!! 昼間からそんな破廉恥な行為をするなんて、最低だよ!! 君はそんな人じゃないよ!!」
そうだ。いかんいかんいかんっ!!
「いや、故意の接触で無い以上破廉恥とは申せませぬ。あくまで接近遭遇による偶発的不可抗力であり、被告草津拓也は推定無罪であります」
そうなんだよ!! 俺は俺は俺は無実だ!!
「けっ。空々しいぜ。ゲッヘッヘ奥さぁんとか考えてたんだろう。 これは旨い具合だとかおもってんだろ?」
「いや、そんな俺は、ちょっとは、いや断じて、皆無で、だから」
「拓也さん面白いですー」
「……本当に?(脳内に響くひめの声)」
だっ、黙れひめ!! 無表情にそんな事聞いてくるな!!
……しかし、頬に感じるこの圧倒的な包容力!
最近また少し成長したとはいうものの、まだ小ぶりなゆのはの身体とはまるで違う、この安らぎに満ちた肉のふくらみ……!
「……さっさと離れないと……たぶん死にますよ?(脳裏に響くひめの声)」
だ……だがな、身体が動かないのだ。 この魂の安息にも似た感触が、傷ついた身体の俺を優しく包んで……。
「はっ!?」
殺気!? さらになんか空気が凍っていくぞ!!?
「ゆのは……おねえちゃ……こ、怖い! 怖いです!!」
ありえないくらいおびえたひめの声に、木星の引力にも匹敵する強大な魅惑にあらがって声のする方を見た。
「たぁ〜〜〜くぅ〜〜〜やぁ〜〜〜……?」
神が居た。ただし、鬼神という名の神が。
「ゆ、ゆゆゆゆゆゆゆゆのは!? いやちがうこれはそのあれだ偶発的事故と言うか不可抗力と言うか俺の意思とは基本的に無関係であって俺にはお前以外誰も居ないってあぁおいひっぱるな何処行く気だ(以下略)」
「おにいちゃんごめんなさい、ひめにはどうしようもありません。 ……せめて安らかに眠ってください」
ひめ! 今この状況で安らかに眠ってくださいはいろいろとシャレになってないから!!
だから手を合わせるな!! 十字をきるな!!
ああゆのは、わざわざ外にまででて俺に何しようとしてるんだ!!?
つーか怖いから返答くらいしてください!! そんな無表情に俺を見るなあぁぁぁぁぁぁ!!!

ばたん、とドアが閉じた。

「なんだかさわがしいのです、なにかあったのですか?」
「…聞かないでください」
聞き憶えのある少女の声と、げんなりしたひめの声が聞こえた時、俺は雪の降る路上のどまんなかで震えていた。
なんでこんなときに限って誰もいないんだろうなぁこの商店街は。





―10分後
色々な意味で精魂尽き果てた俺は、カウンターに黙って突っ伏していた。
「すごいたんこぶですー、ゆのはちゃん、外で拓也さんに何があったの?」
「知りません!」
……俺も思い出したくない……この世の地獄とはアレの事か……?
「うーん、じゃあ、もう紹介しちゃっていいですか?」
「勝手にしてください」
「と、言うわけで、今更ですがこちらは拓也さんと、ゆのはちゃんと、ひめちゃんですー」
わかばちゃんが取り持って、改めて仕切り直しの自己紹介。
俺の前には温かいブレンドコーヒー、……があるが飲む気力が無い。
わかばちゃんがホットミルクティーで、ゆのはとひめの前にはとっても豪華なイチゴパフェ……
が、何かにおびえているようなひめには、いつものような勢いは無い。
「…ゆのは、そんな顔して食っててうまいのか?」
「誰のせいだ誰の!!」
なんとか振り絞った気力で場を和ませようと一言出したのだが、どうやら今の俺にはそんな気の聞いた言葉は出てこないようだった。
しかしまぁいつ見ても美味そうなパフェだ。
外の模型の見掛け倒し攻撃かと思ったら、イチゴがふんだんに乗っかってて、本当に豪勢だ。
「…ど、ども……草津拓也です」
今はこれが精一杯。
「ゆのはです」
「…ひ、ひめです」
二人もかなり簡略的。俺とは別な意味で余裕が無いらしい。
「まぁ、ごていねいに。 マスターの榛名です。 それから娘の……穂波ちゃん、ご挨拶しなさぁい」
「桂沢穂波なのです」
カウンターの向こうにいる穂波ちゃんが食器を洗いながらコクッと会釈をする。
「穂波ちゃんと榛名さんは、クリとクラみたいにとーっても仲良しなんだよー」
「へ、へぇ。よろしく」
取り敢えず俺は、ようやく戻りかけてきた気力を振り絞って挨拶した。
「……」
…なんかこっちのほうジッと見てる気がするんだが……まさか、また俺の正体見破られてる!?
たしかひめの力だと霊感強かったりすると事故当時の姿のまま見えたりする事があると…
「…うーん、今回は表面的な傷はほとんど無かったと思いますが…むしろ内部の骨折の方がひどかった気が」
ひめに目をむけると、冷静な解説が帰ってきた。やっぱ立ち直り早いよなぁ。
「実は、拓也くんとゆのはちゃんはですねー、とーっても苦労されてるんですよー」

ゆのはとひめが捏造した草津一家伝説を、わかばちゃんが独自解釈で噛み砕いて、榛名さんに紹介してくれた。
…もちろん、重要ポイントにさしかかるたびに、ゆのはとひめが演技たっぷりのお芝居を差し挟む。
まだそこまでする余裕の無い俺には、相槌を打つ事しかできなかったが。

「…それまで優しかった親戚のおじ様まで、『カァー、ペッ! 貧乏姉妹に食わせる飯なんざ、粟飯の一杯たりともねぇ!』と言って…(略)」
う……ううっ、騙されるものかと思っているのに、ゆのはの姉妹悲話を聞くたびに、熱い涙がこみ上げてくるぜ。
かなしいよ。なんてかなしい姉妹なんだ!!
ちなみに、親戚である俺の親は遠いところに行って連絡が付かないということで―実際アルゼンチンに行ってるからまちがいでは無い―この親戚のおじ様とやらは俺の親と言うわけでは無いらしい。
「まぁ……まぁまぁまぁ……なんてかわいそうなお話なのかしら!」
榛名さんまで泣いてる……。 うーん、本当にこの町の人たちはいい人ばっかりだなぁ……。
と、食器を洗い終えた穂波ちゃんが、俺達の横をスッと横切って、奥のテーブル席に腰を下ろした。
「穂波ちゃんも聞いて聞いて、かわいそうなお話なんだよー」
「…………」
うなづいた穂波ちゃんは、レジからメモ帳を取ってくると、特に俺達の話に耳を傾けるでもなく、なにやらボールペンで書き始めた。
「…ねぇママさん。 どうして穂波ちゃんは、隅っこに座ってるの?」
「あそこはあの子の指定席なの。ちょっと大人しい子だけど、仲良くしてあげてね」
ふーむ、そういえば前もあの辺りで座って色々描いてたよな。
「うん! わっ、このイチゴパフェ美味しい!!」
「ねー、言ったとおりでしょー」
…もう機嫌が治ったのか? お前も俺に劣らず単純だぞ。
「あっはっは、ゆのはは甘いものが大好きだからな」
「…単純なのはおにいちゃんも同じです。 あ、でもほんとうに美味しいですね」
ひめもようやく食べ始めたらしい。
「お口に合って、よかったわぁ」
「……拓也、今回はもう許してあげますけど、次があったら…」
「わかった、わかったから思い出させないでくれ」
…なんかこの先もずっとひきずりそうだなぁ。
無かった事にして欲しいことって誰にでもあるものらしいのだが、こうなると俺以外そんなやついるのか? とも思えてくる。
…と、気まずくなりふと隅っこに目をそらすと…
なにやら書き終えたほなみちゃんが、他のみんなの目を盗んで、俺にメモを見せてくる。
「…………」
『もしかして会った事ありませんか?』
…は?
「…………! (いやいやないない)」
声を出さずに首だけ振ると、穂波ちゃんはまたメモ蝶に筆を走らせた。
『でも、さっきの話もどこかで聞いた事ある気がするのです』
うわー、この子絶対憶えてるよ!!
…いや、でもこの聞き方は記憶が完全ってわけでもなさそうだな。
だれも見破れないはずのゆのはの術を見破ってたくらいだし、かすかに記憶が残っててもおかしくはないかもしれん。
「そんなに気に入ってくれたのぉ_? 嬉しいわぁ、いっくらでもおかわりしていいからねぇ」
「わぁ、ホント!? パフェおかわり!?」
「ママさん、いいんですか?」
「もちろんよぉ。 こんなに美味しそうに食べてくれるんですもの、今日は特別にお代もタダにしちゃう」
「え? う、うそぉ!?」
「あ、ありがとうございます!!」
「わぁー、よかったね、ゆのはちゃん、ひめちゃん」
和やかな会話が続くテーブルの向こうで、穂波ちゃんがまたなにかメモに文字を走らせている。
「…………」
『前は、ほとんどゾンビだった気がします』
「……!(なにがっ!)」
思いっきり首を横にふってやると、また次のメモ……。
『黄泉帰りから何日目?』
「…だから違うって」
いや、違わなくは無いのだが…
『前より一人増えてません?』
「……」
ピンポイントすぎる、こりゃ部分部分で憶えているのはほぼ確定だ。
「拓也さーん。どうしたんですかー?」
ゆのはとひめ、それとわかばちゃんが振り向くと、穂波ちゃんはサッとメモをしまってしまった。
「あ、いや……ピンポ……、ピンポンでもやりたい気分です」
「…拓也、ワケわかんないって…」
「なんだか挙動不振です」
お前等は人の苦労も知らずに!!
「ピンポンはないけど、もうすぐ卓球大会があるよー」
「そ、そうか。 ならば昔温泉卓球で鍛えた俺の卓球の腕を見せてやるぜ!!」
ああ苦しい
「そーゆーワケで、拓也さんは、アルバイト先を探しているんですー」
「そうねぇ、お父さんお母さん妹さんに婚約者さんのためにもお金をしっかり作らないといけないし……もう当ては見つかったのかしら?」
「あ、いや、まだ特には……」
「このお店は人手、足りてるんですかぁ?」
「そうねぇ、お昼時とか、買い出しとか手伝ってくれる人がいるといいけど……」
「拓也は、大飯ぐらいの役立たずだけど御飯作ったり買い出しは大得意なんですっ!!」
おー、『おひるどき』が得意とは言わなかったな。
前は思わず『おひるどきは得意じゃない』つっこみそうになってたんだぞ。
「だから、お願いします。ぜひ拓也を働かせてあげてください」
「ママさん、私からもお願いします」
ゆのはとひめの連携プレー。これで今日目にしたのは何度目なんだろうなぁ。
「そうねぇ、私はとーっても助かっちゃうけど……」
そう言って、榛名さんがチラッと穂波ちゃんを見る。
「…………」
そりゃそうだよな、榛名さんのすんばらしいおっ……いやいやげふんげふん。
バイトで雇ってもらえないのは名残り惜しいけど、母親と年頃の娘さんだけで切り盛りしてるところに若い男が入りこむのはなぁ。
……と、言いたいところだが…
「私も、別に構わないのです。 …おかあさんの具合もありますから」
だよなぁ、前もゾンビ化した俺を直視しておいて同じ事言ったくらいだし。
何より今回はこっちの事を顔見知りとして認識している可能性もある。
…それにしても、榛名さんの具合? なにかあるのかな。
「ほんとー、穂波ちゃん?」
「……うん、それでいいのです」
さっきまで表情の少なかった穂波ちゃんが、口元だけで笑って俺をじっと見た。
な、なんだ…この視線は!?
まさかこの子…………。

――恋!?

…って感じでもないな。やっぱり憶えてるっ事なのか?
それにしたってその事を俺以外に悟らせないようにしてるし…
不安だ……




気づけば、窓の外がほんのりとオレンジ色に染まり始めている。
「それじゃ、いろいろと本当にありがとうございました」
「いいんですよぉ……拓也くん、いつでも気が向いたら、アルバイトしに来てくださいねぇ」
「はい、すみません……って、あの、お会計は?」
「あら、マスターのおごりだって言ったでしょ?」
「もー、拓也は頭も耳も悪いんだからぁ!」
「そうですよ、厚意は素直に受け取っておくものです」
俺の背中を押したゆのはが、さっさと店を出て行こうとする。
いやちょっと待て…やっぱこれはなんか違う気がするぞ!
「…ゆのは、ひめ」
「な、なに拓也?」
「なんですか、おにいちゃん?」
「バイトでお世話になるかも知れない以上、お金のけじめはきっちりつけておく。これが正しい人間としての行動だ!」
俺は、八百屋のおじいちゃんにもらった千円札を取り出した。絶対たりないだろうけど、けじめくらいはつくと思う。
二人が食べたパフェ代になるんだ。なけなし千円札だが、きっと天寿を全うしたってことだろう。
「わ、わーっ、莫迦!! 正しい人間も何も既に騙し、もがもが……!」
「…まぁ、そこまで言うなら、急ぎませんからいいんですが……」
さりげなく片手でゆのはの口を塞ぎつつ……。
「パフェ4杯にコーヒーまで飲んだから、足りないでしょうけど……すいません」
「まぁまぁ、お気持ちだけでいいのにぃ」
「いえ、ですが」
「うーん……じゃあお気持ちとして、パフェ1つ分だけ、いただきますねぇ」
受け取った千円札を、榛名さんがレジの穂波ちゃんに渡す。 それをゆのはが、すごーく情けない顔で見ている。
「……もーっ! 人のせっかくの好意を、拓也の甲斐性なしの見栄っ張り!!」
いてて……つねるなつねるな!
「文句を言うな。 お金はなくても心は錦さ!! すんません、気を使ってもらって」
「とんでもないわぁ。 いい恋人さんね」
「いやぁ、それほどでもー」
「ゆのはちゃんとひめちゃん、すごくしっかりしてるんですよー。 ほとんど守銭奴なみ」
「え、まさか、いや、それほど」
ストライクな言葉に、弁護も出来ず、かといって肯定もしにくく悩んでいたら、背中をツンツン……とつつかれた。
「……お釣り」
「あ、ありがとう」
レシートと一緒に、穂波ちゃんが100円玉を手渡してくる。
…お釣り200円。 やっぱ高いよなぁ、パフェって。
 
―所持金 0000200円―

まぁ、そのぶんスゲエ豪勢なパフェだったもんな。 こんなもんか、うん!
「あ、あの……」
「はい?」
穂波ちゃんがじっと俺の目を見る。
「……やっぱり思い出してるのって私だけなんですか?」
…………なに!?
や、や、や、やっぱり思いっきり思い出してる!!
これって俺達大ピンチ!?
「あ、あの……穂波ちゃん?」
「拓也、わかばおねえちゃんもう行くって」
ゆのはが俺の腕をつかんでくいくいとひっぱっていた。
「え? あ、そうか、わかった」
うーむ、この局面は助かった気がするが、これはこのまま放ってはおけなさそうだなぁ。
穂波ちゃんの霊感恐るべし。
「「おじゃましましたー」」
「はーい、ありがとうございます」



 

 

12/18(四編)へ続く


 


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